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第158回文楽公演 第一部 平成19年2月 国立劇場 [文楽]

先週に引き続いての文楽、今回は第一部の「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)」に行ってきました。

東京マラソンの影響もあって、着いたのが開演ぎりぎりになってしまい、開演前の三番叟を観ることができませんでした。

今回の演目は「奥州安達原」の三段目から、「朱雀堤の段」「環の宮明御殿の段」です。特に後者のうち「袖萩祭文」と呼ばれる袖萩と親とのやりとりの愁嘆場が見所です。

今回の話は本当に複雑で分りづらいです。これまで観てきた演目の中でもダントツに話が難しかったかも。前日に行った親からあらかじめ聞いていたので、なんとか理解できましたが、いきなり行ってすっと筋書きが入ってくるのは難しいと思います。

あらすじとしては、安倍頼時の敵討ちを巡る八幡太郎義家と安倍貞任・宗任との話、とある男性(これが貞任なのです)と駆け落ちし今は物貰いに身をやつしている袖萩と親(平傔仗・浜夕夫妻)との再会の話、環の宮失踪を巡って侍従である傔仗が切腹に追い込まれる話、が複雑に絡み合って話は展開していきます。傔仗と袖萩が悲しい最期を迎えるとともに、義家と貞任・宗任が戦場での再会を約して去っていく勇壮な場面で段切れとなります。

 今回の床本。今日はあまり開かなかったです・

全般を通じて、紋寿さんの遣う袖萩がとても良かったと思います。過去の暗い影を引きずった雰囲気や、「袖萩祭文」で歌に託したの悲痛な心境が痛いほど伝わってきました。また老女形の頭(かしら)がきりりとしてとてもきれいな頭でした。物乞いに身をやつしても武家の娘としての気品というか、凛とした雰囲気が感じられました。

個々の段では、「朱雀堤の段」の呂勢大夫さんの伸びやかな声、「環の宮明御殿」の中の新大夫さん、声がしっかり通っていたのが良かったと思います。新大夫さんは、切場でお父さんの十九大夫さんが語られるのを白湯汲みで真剣なまなざしで見ていらっしゃったのもとても印象的でした。次の部分では清治さん。見せ場となるような場面では無かったものの、相変わらずの鋭い撥捌きはもちろん、オクリの哀愁漂う音色は秀逸でした。

そして切場の十九大夫さん、富助さんはやはり最高でした。十九大夫さんは、どちらかというと同じ時代物でも豪快な語りのイメージが強いのですが、今回の「袖萩祭文」では魅力的な声色はそのままに、表に出すことが許されない親子の強い情愛、また袖萩の悲痛な叫びを見事に表現されていらっしゃったと思います。浜夕が袖に下がるこの場面最後のところでは泣かずにはいられませんでした。

その後の奥は、咲大夫さん、燕三さん、勘十郎さん、玉女さんによって、段切れまで息をつかせぬ熱演が続きました。浜夕の和生さんも含めて、次代の文楽を背負っていかれる方々が勢ぞろいしての力強い段切れを拝見していて、玉男さんの訃報以降続いていた寂しかった気分が吹き飛ばしされたような、そんな気持ちがしました。

来週は第二部の「摂州合邦辻」です。以前大阪で拝見した時の文雀さんの玉手、文吾さんの合邦道心がとても素晴らしかったことが思い出されます。文吾さんも1月公演から復帰されましたし(若干やせられていたのが気になりましたが)、楽しみにしたいと思います。

 

(おまけ)

今日の観劇弁当は、弁松総本店のお弁当にしました。お赤飯のごはんが美味しくて、とても好きなお弁当です。今日は甘いものに備えて少し少なめにしました。

 

 


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雛鳥

こんばんは、ご訪問ありがとうございました!
「奥州安達ケ原」は本当にややこしい話ですよね…。
頭の中で人物相関図を作りたくなりました。
紋寿さんの袖萩は、控え目ながらも凛とした気品が残り、とても良かったです。
丁寧に遣われますので、華やかさがない役でも、確かな存在感を感じられます。
因みに、私も「弁松」の赤飯弁当、大好きです!
歌舞伎座へ行くときによく買いますが(目の前ですし)、
夜の部の前だと、たまに赤飯は売り切れ、という残念な思いもしばしばです…。
by 雛鳥 (2007-02-20 00:05) 

Lipatti

> 雛鳥さん
こんばんは!ご訪問ありがとうございます。
紋寿さんは少ない動きの中で役の気品を見事に表していらっしゃいますよね。今回の役は本当にはまり役だと思います。一方で忠臣蔵の勘平のような役も見事に遣われる素晴らしい人形遣いでいらっしゃると思います。
確かに歌舞伎を観るときは弁松で買いますよね。(笑)
お弁当の雰囲気がまさに観劇向きですし、箱の香りがとても好きなのです。
by Lipatti (2007-02-22 00:24) 

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